看護師には、「お礼奉公」と呼ばれる仕組みがあります。
病院から学費相当の費用を奨学金として負担してもらう代わりに、その病院で3~5年間勤める約束をするものです。
とはいえ、実際に働いてみて、想像以上にきつい現場の状況から辞めたいと思うことは、当然あります。
しかし、お礼奉公のために、辞められないと悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
今回は、そのような悩みの解決策について説明していきたいと思います。
看護師のお礼奉公があるのに悩んでいませんか?辞めたいなら無理せず転職
奨学金を借りた恩義を感じるのは、人として当然ですが、きつい職場で体を壊してしまっては、元も子もありませんね。
看護師になれた、お礼奉公で悩んでいる場合、どうしたらよいか、紹介してみたいと思います。
厳しい看護の現場
看護師の現場は忙しく、残業(サービス残業含む)が常態化している施設が少なくありません。
夜勤のきつさや、上司によるパワハラなど、私自身も病院で勤めていますので、その実態はよく理解しているつもりです。
鳴りやまないナースコールや、次々と押し寄せる緊急入院、手術や検査の準備など休む暇もなく働いている人も多いと思います。
しかも、漫然と対応していては、患者の命や安全に関わってきますので、気を抜くこともできません。
高い緊張感と閉鎖的な環境により、人間関係がギスギスしている職場も少なくないと思います。
影響力のある看護師や医師による暴言や威圧的な態度は、職場の雰囲気を悪くしますし、それを改善できない上司の姿もストレスになります。
また、こうした通常業務に加えて、各種委員会や看護研究、研修などへの参加を求められますので、時間外労働も増えていきます。
本来看護の仕事は、病める人のそばによりそう尊い仕事であるべきですが、まるで過酷な流れ作業のようになっている職場も残念ですが少なくないようです。
看護師は慢性的に不足しており、離職率も高いため、残っている看護師の負担は大きいものとなります。
そんな中でお礼奉公の名の下で、一定期間、看護師を拘束できる制度がいまだに残っています。
お礼奉公中でも辞められる
時代も令和となり、江戸時代ではありませんので、法的に奉公という制度はありません。
労働基準法や民法によって、辞めたい意向を示すことでその職場を辞めることは、法的に保障されています。
まずは、このことを確認しておきましょう。
しかし、いざ辞めるとなると、上司から強いプレッシャーがかかったり、お礼奉公を理由に引き留められることも考えられますので、もう少し説明していきたいと思います。
辞めたくても、辞められないのは、恩知らずと思われないか、お金を借りているし、返済はどうしたらいいのか、などいろいろと考えてしまいますよね。
退職と奨学金の返済は分けて考える
お礼奉公は、奨学金の返済を免除する代わりに、一定期間働くことを約束するものです。
学校に行くための資金を援助してもらう条件として、施設側が提示しているものですので、途中で退職する場合は、奨学金を自分で返済する必要はあります。
しかし、それは、その職場で働き続けなければならないわけではありません。
そのように、期間を定めて拘束することは、労働基準法により禁止されています。
一方退職については、民法の規定により、2週間前までに退職の意向を示す、つまり退職届を提出することにより可能とされています。
ただ、就業規則で1カ月前までには退職の意向を示すよう定めている施設が多いと思いますので、原則就業規則に従います。
その場合、奨学金の返済は必要にはなります。
ただし、すでに一定期間就業しているのであれば、全額ではなく、働いている期間を日割りなどで計算し、残っている期間分の奨学金返済で済ませるということは交渉可能です。
退職と同時に返済が必要か
返済額は100万円を超える可能性がありますので、それを一括で返済するのは、現実的に難しい場合があると思います。
ですので、それも施設側と交渉し、分割での返済にしてもらうことは可能です。
あるいは、転職してから一定期間の猶予を設けてもらってから返済するという形でもよいでしょう。
一括で返済できないから、退職できないということではありませんので、気を楽にしましょう。
転職先が負担してくれるケースも
決して多くはないですが、転職先の病院が残りの奨学金の返済を負担してくれるケースもあります。
これは、転職紹介サイトなどでエージェントに相談し、それが可能な病院を探してもらった方が見つけやすいでしょう。
ただ、この場合、転職先に負い目を感じてしまうこともあったり、転職先の現場も合わずに退職したときのことを考えると、必ずしもお勧めはできないと個人的に考えています。
悪質な場合は相談を
お礼奉公を盾に、退職を認めようとしない施設もあるかもしれません。
法的に退職は問題ないのですが、「ルール違反」や「他のスタッフに迷惑」などといった理由で、感情的に辞めにくい状況をつくり出してきます。
こうした場合は、労働基準監督署や弁護士などに相談した方がよいことがあります。
退職代行サービスのNEXT【supported by 豊楽法律事務所】
相手が威圧的に対応してくる場合は、こちらも法的な知識を身につけて対抗していきましょう。
そうならないのが、お互いにとっていいのですが、どうにもならない場合は、第三者に入ってもらって、客観的な問題解決が一番良いと言えます。
看護師のお礼奉公の悩みまとめ
看護師のお礼奉公中の退職について解説してきました。
お礼奉公中であっても、看護師の退職は、可能であること。
残っている奨学金の返済については、減額や分割での返済の交渉が可能であること。
こうした知識を踏まえて、粛々と退職手続きを進めていきましょう。
過剰に怖がる必要はありません。
きつい現場とはいえ、あなたを育て、給料を払ってくれた職場です。
感謝の気持ちも持ちつつ、あなた自身の幸せな看護師ライフのために前進していってください。